総合診療科の日々是好日@大阪

大阪府内の病院で家庭医・総合診療をしています。日々のカンファや学びの内容をブログで紹介しています。「教育なくして成長なし」と日々思います。

2020/04/18 低アルブミン血症に対してどう考えるか

4月に入ってからはCOVID19のためにカンファレンスがまとまってできない状況なので、カンファをするとしたら‥と思い個人としての知識の整理をしていこうと思います。

先月も今月もあった2.0未満の低アルブミン血症で全身性浮腫の入院事例。どう考えるかの型を簡単に整理します。

 
  • 血清アルブミンは正常人の血清蛋白の60~75 %を占める
  • 肝臓でのアルブミンの合成量は動物の種によらず200mg/kg/day前後
  • 原因としてまずは…
    • intake不足
    • 合成素材の不足:吸収不良症候群(続発性としてblind loop、胃切除後・短腸症候群)
    • 合成不良:肝硬変や肝癌・膵外分泌機能不全(アミノ酸の吸収低下→Alb低下)
    • 漏出:尿(ネフローゼ症候群)・消化管・皮膚(熱傷)
  • 消化管からの漏出として吸収不良症候群、蛋白漏出性胃腸症
  • 吸収不良症候群は蛋白質以外の吸収不良も含む広い用語
  • 蛋白漏出性胃腸症について考えると
    • 蛋白漏出はAlb以外に,transferrin,ceruloplasmin,IgG,IgA,IgM、フィブリノーゲンなどの血清蛋白、コレステロールも喪失する
    • 従ってAlb低値だけでなく低蛋白血症の低下を見た時に考える
  • 原因 up to dateより(多数の疾患が書いてあるためある程度まとめて記載)
    • 病態は①びらん・潰瘍からの漏出②粘膜面に異常はないが蛋白が漏出③リンパ管閉塞などでの腸管からのリンパ液漏出粘膜。重複する疾患があるので、ざっくりいうと「粘膜障害の有無」がポイント
    • 粘膜障害あり
    • 粘膜障害なし
      • アミロイドーシス
      • メネトリエ病:先天性の過形成胃炎で巨大雛壁を作る。稀な疾患
      • 膠原病:RA,SLE,SjS,IgA血管炎が多い。毛細血管の透過性↑が機序として考えらえている。
      • リンパ管流の障害:「原発性」リンパ管拡張症、右心不全、収縮性心膜炎
        • リンパ管拡張症とは
        • リンパ管の機械的閉塞・形態異常・肝硬変などでの静脈うっ滞
        • 胸腹水は乳びとなるのが特徴
        • 治療は低脂肪・成分栄養
        • 収縮性心膜炎:頸静脈拍動,静 脈圧亢進, 透視下における心拍動の減退,心膜石灰沈着などとともにECGでlow voltage+T波の平低化 。心カテーテル所見は右心室の拡張終期圧が高く拡張期プラトーをみる
      • collagenous collitis・好酸球性胃腸炎・アレルギー性胃腸炎病変なくても生検が必須
      • Whipple病:100万に1人という稀なT. whippleiによる感染(土壌から)
        • 培養が困難なため, 確定診断は通常PCR法あるいは免疫染色
  • 検査
    • 3日間の畜便でα1アンチトリプシンクリアランスの測定(小腸から生理的にほとんど再吸収されない)→当院では検査室と相談で実施できない
    • 消化管出血シンチ(51Crや125-Iででラベルしたアルブミン、99mTcでラベルしたトランスフェリン)はコスト面では上記クリアランス検査よりも高い
    • 感度はα1アンチトリプシンクリアランスの測定が93%、シンチが90% Gasteroenterology.1981;81(4):777.

診断というところまでで重きをおいて自分の頭を整理してみました。

他に特殊な病態としてcapillary leak syndromeもありますが、稀な病態で、リーク期は数時間でショックになりますが、数日後には漏出した水分がかえってきて利尿期にはいるという波が大きい病態です。