2020/03/24 ブドウ球菌菌血症にルーチンにRFPは有効か?
Lancet. 2018;391(10121):668-678.
【なぜ読もうと思ったか】
人工物がない、肛門周囲膿瘍からのMSSA仙骨骨髄炎・菌血症の症例にてRFPを投与すべきか、いれるならいつからどれぐらい入れるのかと疑問だった。
【背景】
米国感染症学会 (IDSA) のガイドラインでは、MSSA菌血症はβラクタム薬静注を少なくとも14日間続け、MRSA菌血症はグリコペプチドで、治療するよう推奨。ただ、これは観察研究と臨床的な経験に基づいている。
ブドウ球菌菌血症は死亡率は約20%にのぼり、RFP併用治療はMRSAの骨髄炎、PJI、感染性心内膜炎において推奨されているがその根拠は弱い。
【PICO/PECO】
P:18歳以上のブドウ球菌菌血症(MRSAは全体の6%)758例。2012-2016年の英国での多施設RCT。
除外:ブドウ球菌がコンタミネーションや他菌種による感染と考えられる場合、活動性結核が疑われる場合、RFP耐性のとき。
I:抗菌薬開始96時間以内にRFP 600mg or 900mgを2週間投与 or 抗菌薬治療が終了した時まで
C:プラセボ
O:Primaryは12w後の細菌学的な再発率・全死亡
【批判的吟味】
Backgroundは同等か:
年齢65歳ぐらい 基礎疾患としてのDMはあるがその程度については記載なし。
MRSAが6%、自然弁のIE4%、人工弁・人工関節2%、血管内デバイス5%
皮膚・軟部組織感染18%、血管内カテーテル17%
SOFA2点、抗菌薬投与開始からランダム化まで62時間平均
Intention to treat解析か:されている
Maskingはどの程度されているか:薬剤師と統計をとる人以外はマスキングされている
Nは十分か:Nは計算上十分だが脱落が40%近くある(死亡率も高い)
結果
primary endpoint:細菌学的に証明された治療の失敗または再発+全死亡
17% vs 18% 絶対リスク差:-1.4% (95%CI:-7.0~4.3)
治療失敗 1% vs 1% P=0.82
再発 1% vs 4% P=0.01
死亡 15% vs 13% P=0.30
RFPの有害事象は
投与量調整を要する有害事象 (17%vs10%)、胃腸障害、腎・尿管障害、薬物相互作用など。いずれもリファンピシン併用群で多かった。
【感想】
ブドウ球菌菌血症に対して標準治療でもRFP併用しても全死亡率は変わらない。ルーチンでブドウ球菌菌血症にRFPを投与するということにはならないが、今回の患者層はMRSA感染含めた重症例は少なく、人工物感染も2%と少ない割合であり、そのような患者には投与しない、とまでは言えない。
2020年度 これから何をoutputするか
初めまして。大阪の病院で家庭医療・総合診療医をしているもののブログです。
日々、外来・病棟・教育・地域へのアウトリーチなどと忙しくしています(もっと研究はしないといけないと思いながらなかなかできてない…)
このブログを作ろうと思ったのは、
1)自分たちが学んだことや毎日の疑問をどう考えていくか、積極的に発信しようとすることで自分たちの知識を確かなものにする
2)自分たちのチームの活動を表現することで仲間を増やす(初期研修医、後期研修医、スタッフとも)
3)院内の総合診療科としてだけでなく、地域全体の医療を良くできるように、地域の医療者と活動内容を共有する
という3点を最近考えるようになり、表現してみようと思いました。
医療は不確実性がつきものですが、間違った内容にならないように吟味しながら、多くのことをoutputしていきたいと思います。皆さま、どうぞよろしくお願いいたします。