総合診療科の日々是好日@大阪

大阪府内の病院で家庭医・総合診療をしています。日々のカンファや学びの内容をブログで紹介しています。「教育なくして成長なし」と日々思います。

2020/04/01 カンファ:血管炎を疑った皮膚生検で、蛍光抗体法はどう解釈すべきか?

症例カンファにて上記の疑問。

この症例ではIgA血管炎、PAN、MPA、IVLが鑑別の上位となっていた。

そもそもの復習もかねて考えてみます。時間がなく総論の論文はまだ読めてないのでエッセンスだけ・・・

 

血管炎の場合、生検でみていくのは「どの太さの血管が障害されているか」という点は大きい。カンファではIgA血管炎を疑う症例だったので話題になったのはその際に追加される皮膚生検の検体で免疫抗体法はどれぐらいの意義がある?という点。

  • 例えばIgA血管炎での皮膚生検の注意として、「出現から24時間以内の皮疹を含めて生検をするべき。なぜならそれ以降になると血管障害がすべてのタイプのIgの非特異的漏出をきたす」up to date(NEJM 1997 PMID:9366584)
  • もう少し具体的にみると
  • IgA血管炎で皮膚蛍光抗体法でのIgA の陽性率は 50~70 %程度と報告があり、現在でも同様(日本皮膚学会総会2010 http://medical.radionikkei.jp/maruho_hifuka_pdf/maruho_hifuka-101028.pdf
  • IgA血管炎では免疫複合体が関与するが、免疫複合体は血中で形成後 6 時間以内に皮膚血管に沈着
  • その後浸潤する 炎症細胞によって貪食され、また 周囲への拡散によっても減少し、 48 時間後には免疫グロブリンはほぼ消失。C3 は免疫グロブリ ンより減少速度が遅いが、72 時間後には検出率は 50%以下。それ以降急速に消失
  • 臨床的に IgA血管炎が十分考えられても IgA が証明できず、C3 のみ陽性であることが多々ある。

ではIgMやIgGなどの沈着はどれぐらいの意味をもつかということになるが

  • MPAは肉芽形成はせず、免疫複合体も沈着しないpauci immune型
  • GPA,EGPAは肉芽形成をするタイプ
  • ANA関連血管炎では免疫複合体沈着はなくあっても微量とされる。

とANCA関連血管炎の中でも免疫複合体があるか、肉芽形成をするかというのは病理学的に参考になる。もちろん生検のタイミング(免疫複合体が消えていないか)・臨床症状が合致するかはとても重要。

 

余談だが、PANのエッセンスとすると(カンファでも診断経験がある人がほぼいない)

  • そもそもが動脈周囲の結節→動脈内部での壊死性血管炎とわかり今の名前が残った(血管炎症候群ガイドライン2017)
  • 細動脈・毛細血管・細静脈には炎症はない。中>小動脈のレベル=糸球体腎炎は起こさない点はMPAと異なる
  • 有病率は10万人に1人とまれ。
  • 臨床的なポイントとすると、生検には皮下結節、有痛性の清掃、痛みを伴う神経や筋肉(腓腹筋が目立つ場合あり)が診断的意義が高い。生検できない時には腎臓・肝臓・腸間膜の動脈での狭窄・瘤を確認。
  • 病理学的には時間軸で1~4段階あり異なる(どのphaseをみているのか炎症の急性期なのか時間がたった後なのかは病理医とも相談が必須)
  • 皮膚のみの血管炎の場合(難治性潰瘍、リベドー、結節性紅斑、紫斑)は皮膚型PAN(cPAN)と呼ぶ。
  • 肺疾患としてはほとんどが間質性肺炎(稀ではあるが)

 

病理のことを考えると、そもそも病理学的な変化から始まり臨床症状につながるわけなので、ミクロな視点で考えるのは今更ながらとても重要に感じた。やはり病理の先生とのディスカッションはすごく大事。